2005年07月05日

ドキュメント 戦争広告代理店/高木徹

銃弾より「キャッチコピー」を、ミサイルより「衝撃の映像」を! 演出された正義、誘導される国際世論。ボスニア紛争の勝敗を決したのはアメリカPR企業の「陰の仕掛け人たち」だった…。驚愕のノンフィクション。

前々から気になっていた一冊だったのですが、単行本化したのを機に購入。休み1日かけて一気に読破しましたが、読み応えのあるとても面白い本でした。まあ、後味はあんまりよくないんですけどね・・・

要は本来的には白黒はっきりしていなかった状況を一方の国がPR会社を活用することによって、一気に勧善懲悪の構図を世界に浸透させることに成功したというお話。相手方もいいようにだけされてるわけでなく、反撃を試みたりするので、話に抑揚がついて、読ませるドキュメントに仕上がっています。

これを読むと、この世界で「客観的な視点」を持つことが如何に難しいかが分かります。要はメディアで報道されない限り、その一面しか知ることができないわけで、それを元に判断しようにも、すでにスタート地点から情報が偏向しているわけですから。今回、登場するPR会社はその構造をうまく利用しながら、極めてマーケティング的な「わかりやすく」「キャッチー」な情報露出・プロモーションをすることにより、世論を誘導していったわけです。

「わかりやすく」「キャッチー」な方に流れやすいのは人間ならしかたのないことでしょう。ましてや、これだけ情報があふれる中、そうした感情に訴えかける「フック」のある情報だけが記憶や意識に残ることになります。そういう意味では「情報が多くなり知識を得る機会が増えるほど、理性ではなく感情により物事が動いていく」というアンヴィバレンツな状況に陥ってるともいえます。

・・・んー、何が言いたいのかわからなくなってきましたが(苦笑)、自分としては「こういう社会」であることを是認したくはないのですが、それは「あるもの」として仕方がないので、なるべくそれに流されないようにしたいなぁと思う次第ですね、はい。

そんなことを思わされた一冊でした。ま、マーケティングの仕事してるやつがなにをいうかというご意見もありますね(苦笑)


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